1週間で1キロ痩せたい夜、数字の前でちょっとだけ正直になる

帰宅して、コートのポケットからレシートを出しながら、部屋の空気が「今日もおつかれ」って言ってるみたいにぬるくて、なのに窓は冬の冷たさで白っぽい。
加湿器の水が空っぽなのを見て、私の余裕も同じだなと思った。玄関の鏡に映った自分が、思ったより“ちゃんとして見える日”と、“なんか浮腫んで見える日”があるのは何でなんだろう、って、どうでもいいことに引っかかりつつ、私はキッチンの隅に置いてある体重計を見てしまう。
あれ、そこにいるだけで、こっちのメンタルを試してくるタイプの小さな機械。たまに電池切れしてくれたら、私はたぶんちょっと喜ぶ。
今日の小さな出来事は、会社のメールに「健康診断の予約、今週中にお願いします」って件名が届いたこと。別に怒られるわけでもないのに、件名だけで胃がきゅっとなるの、わかる…。
健康診断って、体調チェックのためのイベントのはずなのに、私の中では“採点”みたいな顔をしてやって来る。しかも毎年、なぜか私はその直前に「せめて1キロだけ…」って思う。恋とか美容とかじゃなくて、ただ“数字を少しでも整えて提出したい”みたいな、地味で、言いにくい見栄。
誰にも言わなかった本音はこれ。
「結果が悪かったら、今年の私って、ちゃんと生きてなかったことになるのかな」
さすがに大げさだよ、って自分にツッコミを入れつつ、でもその瞬間の私は本気でそう思ってしまった。
仕事も将来も人間関係も、自分磨きも、ぜんぶ頑張ってるつもりなのに、最後に“体重”っていう一個の数字にまとめられて、「はい、あなたはこの点数です」って突き返される感じがして、勝手に怖くなる。
ここから先は、いわゆる「1週間で1キロ痩せる方法」みたいな話に見えるかもしれないんだけど、今日の主役はダイエットじゃなくて、“数字との距離感”のほう。
1キロ落とすって、たしかに現実的に見えるし、短期のリセットとしては、ちょうどいい目標にも見える。だけど、その1キロが何でできているのか、そして自分の1週間がどんなふうに削れていくのかまで想像すると、ちょっと話が変わってくる。
「1キロ」って、脂肪だけじゃない。たぶん私たちが思ってるより曖昧
まず冷静な話をすると、体脂肪を1kg落とすには、おおよそ7,700kcalぶんの赤字が必要、とよく言われる。
7日で割ると、1日あたり約1,100kcalの赤字。ここで私は心の中で「え、そんなに?」って声が出た。だって、1,100kcalって、けっこうな量。生活の中で、何も壊さずに毎日それを作るのって、正直むずかしい。
じゃあ、1週間で体重が1kg落ちる人は、みんな毎日1,100kcalも赤字を作ってるの?というと、たぶん違う。体重って脂肪だけじゃなく、水分、便通、食事の量、塩分、グリコーゲン(体の中の糖の貯金みたいなもの)でもかなり動く。だから「1週間で1kg落ちた」は、“脂肪が1kg減った”とイコールじゃないことが多い。
逆に言えば、1週間で1kgを目指すなら、「脂肪だけで1kg」は難しくても、「むくみが抜ける」「食事量が整う」「週平均が少し下がる」みたいな、複合的な変化で到達することはあり得る。
この“曖昧さ”って、厄介でもあり、救いでもある。厄介なのは、努力の結果が数字に反映されるまでタイムラグがあって、途中で心が折れやすいこと。救いなのは、数字が増えた日=失敗、じゃないってこと。今日より明日の数字が悪くても、その日の私はサボったわけじゃなくて、ただ体が水を抱えただけかもしれない。…わかってても、落ち込むけど。
ちなみに、体が軽くなる感覚って、体重より先に「朝の指輪のきつさ」とか「靴下の跡」で気づくことが多い。そこを見ると、数字が少しやさしくなる。
1週間を「削る」じゃなくて「整える」ための過ごし方
とはいえ、健康診断のメールが来た私みたいに、「この1週間だけ、少し整えたい」ってタイミングはある。そこで私が今日、自分に言い聞かせたのは、“何かを禁止して勝つ”じゃなくて、“生活のブレを小さくする”って考え方だった。
たとえば、極端に食べない、みたいなことはしない。急に体重は落ちても、気分が荒れたり、仕事中に集中力が落ちたりして、結局その反動が来る。急激な減量は長期維持にも不利だとされるし、一般的には1週間に1〜2ポンド(約0.45〜0.9kg)程度のゆるやかなペースが推奨されている。
つまり「1週間で1kg」は、体格や状況によっては頑張れば届くけど、毎週やるものじゃないし、無理を前提にしないほうがいい。
じゃあ、何をするか。私がやった(やるつもりの)“整える”は、たぶん地味で拍子抜けする。
・夜に「あと一口」だけ食べたくなるとき、まず温かい飲み物を作る(白湯でも、薄いお茶でも)
・帰宅後すぐのだらだらスマホを、15分だけ後ろ倒しにして、その間に洗い物か洗濯をする
・コンビニに寄る日をゼロにしない代わりに、「買うのは2点まで」ってルールにする(ゼロは続かないから)
・睡眠を削らない。むしろ、早く寝る日を1日だけ作る
これって、痩せるためのテクニックというより、“私の生活の乱れをちょっとだけ落ち着かせる作業”に近い。だけど、体は意外と正直で、乱れが落ち着くと、むくみが引いたり、食欲が暴走しにくくなったりして、結果的に体重のブレが小さくなる。数字が落ちるかどうか以上に、「振り回されにくい私」が増える感じがする。
それからもうひとつ、私が「短期の1kg」に振り回されないために決めたのが、毎日の数字を“判定”にしないこと。もし測るなら、朝トイレ後など条件を揃えて、1日単位の増減より「7日平均」で眺める、っていう見方を採用する。
体重って、気分のグラフみたいに上がったり下がったりするから、単発の数字に一喜一憂すると、心のほうが先に疲れる。だから私は、今日の自分を裁く材料にしないで、ただの“気象情報”くらいに置いておく。雨だから傘を持つ、みたいに、今日はむくみやすい日だから塩分を控えめにしよう、くらいの距離感。
今日の帰り道、駅の改札前で、会社の先輩が同僚と「来週ちょっと絞りたいんだよね」って話してるのが聞こえた。声は明るいのに、言葉の端っこが妙に切実で、私はイヤホンの音量を上げた。たぶんみんな、同じように数字に追い立てられて、でもそれを“明るい雑談”に包んで流してる。そこで私は、急に自分の胸のあたりがざわっとした。
「私も、ちゃんとしなきゃ」っていう気持ちが、善意のふりをして忍び込んでくる感じ。わかる…。誰も責めてないのに、自分だけが勝手に採点会場に立ってる。
だからこそ、この1週間で私がやるのは、“頑張る”じゃなくて“戻す”。外食が続いたら翌日は具だくさんの味噌汁、夜更かしが続いたら週のどこかで1日だけ早寝、甘いものが続いたら「ゼロ」じゃなく「回数を1つ減らす」。小さすぎて拍子抜けするけど、こういう戻し方って、生活に残る。生活に残るものだけが、結局、体にも残るんだと思う。
それに、1週間で1kgって、最終的に達成できなくてもいい。0.3kgでも、0.6kgでも、週平均が少し下がって、パンツのウエストが気持ちラクなら、それは“リセット”として十分だと思う。厚生労働省の資料でも、目標設定は無理なく継続できる行動計画が大切、とされていて、急ぎすぎない前提がある。
急いで結果だけ取ろうとすると、生活のほうが先に折れる。生活が折れると、たぶん心が折れる。私はそれを何度かやってきた。
今日いちばんの違和感は、「痩せたい」じゃなく「提出したい」だった

今日、健康診断のメールを見てから、私はなぜか“痩せたい”というより“整った数字を提出したい”に近かった。これが自分でもちょっと嫌だった。体って、私が生きるための乗り物なのに、いつの間にか「評価される提出物」みたいに扱ってる。しかも評価してくる相手は、実は誰でもなくて、私自身なんだよね。
この違和感に気づいて、私は体重計の上に乗るのをやめた。今日は測らない。代わりに、冷蔵庫の奥で忘れかけてた納豆を出して、味噌汁を温めて、ちゃんと座って食べた。すごく普通のことを、わざわざ“作業”としてやる夜。たぶん、私に足りなかったのは「痩せる気合い」じゃなくて、「自分の生活を雑に扱わない気持ち」だったんだと思う。
もちろん、私だって数字が減ったら嬉しい。嬉しいし、ちょっと安心する。だけど、その安心って、数字そのものよりも、「私は今週、ちゃんと自分を整えようとした」って感覚から来るのかもしれない。
体重が1kg減ったかどうかよりも、夜のコンビニで“雑な買い方”をしなかったとか、寝る前にSNSで誰かと比べなかったとか、そういう小さな“しない”が積み重なって、私の呼吸が少しラクになる。
だからもし、あなたも「今週だけ1kg落としたい」って思っているなら、まずはその理由を自分に聞いてみてほしい。誰かに会うから?写真があるから?健康診断?それとも、ただ最近の生活が乱れてる気がして、リセットしたいだけ?
理由がわかると、やり方も変わるし、無駄に自分を傷つけなくて済む。
たぶん、結果よりも、その1週間の“扱い方”が、いちばん自分にバレる。
今夜の私は、体重計じゃなくて、明日の朝の自分に賭けることにした。起きたときの顔が少しスッキリしてたらラッキー、くらいで。
あなたは、1週間で1キロ痩せたいとき、何を“減らす”より先に、何を“整えたい”ですか?—今週だけでも。





