雨の日の髪が急に気になり始めた夜に検索した「頭皮の気配」という新しい不安

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雨の日の「頭皮の気配」に、なぜか自信をなくしてしまう夜があります

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6月2日。暦のうえでは、そろそろ梅雨入りの足音が聞こえてくる頃です。窓の外はまだ本降りではないのに、空気だけが先に水分を含んで、部屋の中のタオルも、クローゼットの服も、なんとなく昨日より重たく感じる朝があります。

そんな日に、鏡の前でいちばん気になるのは、服でも、肌でも、体型でもなく、実は「頭皮の気配」だったりします。

変な言い方ですが、頭皮って、普段は自分の中で存在感が薄い場所です。顔なら毎日見るし、肌ならファンデのノリで調子がわかります。体型ならデニムのウエストで機嫌を測れます。でも頭皮は、見えないぶん、急に不安になるのです。

雨の日の満員電車。会社のエレベーター。婚活アプリで会った人と、横並びで歩く夕方のカフェまでの道。相手が近づいた瞬間、「私、今日大丈夫かな」と一瞬だけ息を止めてしまうことがあります。

誰かに指摘されたわけではありません。むしろ、ほとんどの人は気にしていないのかもしれません。でも、自分だけが知っている小さな違和感ほど、心を静かに削ってくるものです。

30代になると、清潔感という言葉が少し重くなります。若い頃は、多少寝不足でも、髪が跳ねていても、「まあ今日はそんな日」で済ませられました。でも今は、ちゃんとしていない自分を、ちゃんとしていない人生みたいに感じてしまう夜があります。

本当は、ただ湿気で髪が広がっているだけです。本当は、汗ばむ季節に頭皮がむずむずするだけです。本当は、誰にだってある日常の揺らぎです。

それなのに、鏡の前の私はなぜか、「私って、女として雑になってきたのかな」なんて、急に大きな話にしてしまうのです。

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湿気で髪が乱れる朝は、心まで乱れて見える気がします

梅雨前の朝は、支度に小さなトラップが多いです。

アイロンを通した前髪が、玄関を出た瞬間に少し戻る。オイルをつけたはずの毛先が、駅に着く頃には広がっている。きれいめにまとめたつもりなのに、会社のトイレの鏡では、なぜか生活に追われた人みたいに見える。

これが、地味にしんどいのです。

誰かに「髪、乱れてるよ」と言われるより先に、自分の中の小さな審査員が、やたら厳しく点数をつけてきます。

今日の私は、清潔感が足りない。
今日の私は、疲れて見える。
今日の私は、恋愛市場に出していい状態ではない。

そんな言葉が、頭の中で勝手に流れます。深夜ラジオなら、ここで少し笑えるジングルでも入れてほしいところですが、現実の心にはBGMがありません。ただ、朝の洗面所で、ドライヤーの音だけがやけに大きく響きます。

ファッションを頑張っても、髪が決まらないと全部がぼやける日があります。スキンケアを丁寧にしても、頭まわりに不安があると、なんとなく人との距離を詰めきれない日があります。

この悩みがニッチなのは、たぶん「頭皮が気になる」と大きな声で言いにくいからです。

肌荒れなら言えます。太ったかも、も言えます。服が似合わない、も言えます。でも「今日、頭皮の気配が不安でさ」と友達に話すのは、少しだけ勇気がいります。

だからこそ、夜に一人で検索してしまうのです。頭皮ケア、梅雨、におい、うねり、シャンプー、ブラシ。検索窓に入れる言葉が、だんだん美容というより、自分を安心させるおまじないみたいになっていきます。

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「ちゃんとして見える私」を守るために、見えない場所ばかり頑張ってしまいます

30代の自分磨きは、キラキラだけではありません。

新しいリップを買うことも、かわいいワンピースを着ることも、もちろん楽しいです。でも実際には、もっと地味な場所で自分を支えている気がします。

たとえば、夜のブラッシング。
たとえば、シャンプー前にお湯でしっかり流すこと。
たとえば、濡れた髪を放置しないこと。
たとえば、枕カバーを替えること。
たとえば、髪の根元を乾かしながら、「今日もよくやった」と自分に言ってみること。

派手な美容ではないけれど、こういう小さな手入れが、翌日の自分を少し助けてくれます。

でも、ここでまた30代女性のややこしさが出てきます。

自分を大切にしたいだけなのに、いつの間にか「大切にしなきゃいけない」に変わってしまうのです。

ちゃんと寝なきゃ。
ちゃんと食べなきゃ。
ちゃんと保湿しなきゃ。
ちゃんと運動しなきゃ。
ちゃんと婚活しなきゃ。
ちゃんと老けないようにしなきゃ。

ちゃんと、ちゃんと、ちゃんと。

その言葉が積み重なって、気づけば美容が休息ではなく、宿題になっていることがあります。

頭皮ケアだって、本来は自分を責めるためのものではありません。湿気の多い時期に髪がうねったり広がったりするのは、珍しいことではないですし、汗ばむ季節に地肌が気になるのも自然なことです。

でも私たちは、自然なことまで「自分の管理不足」と思ってしまう時があります。

誰にも迷惑をかけていないのに、なぜか申し訳ない。まだ何も起きていないのに、先回りして恥ずかしい。そんなふうに、見えない場所のケアをしながら、見えない不安まで一緒に洗い流そうとしているのかもしれません。

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本当に気にしていたのは、頭皮ではなく「近づかれること」だったのかもしれません

少し前、雨の日の夜に婚活アプリで知り合った人と会ったことがあります。

その日は朝から髪がまとまらなくて、何度も結び直して、結局いつもの低めのひとつ結びにしました。服はきれいめのブラウスにしたのに、湿気のせいで前髪が少しうねっていて、待ち合わせ場所に向かう電車の窓に映る自分を見て、もう帰りたくなっていました。

相手は穏やかな人でした。カフェで向かい合って話すぶんには楽しかったです。仕事の話、休日の話、好きな食べ物の話。会話も途切れず、悪くない時間でした。

でも帰り道、駅まで一緒に歩くことになった時、私は少しだけ距離を取って歩いていました。

傘が小さかったから。
バッグが濡れるのが嫌だったから。
そう自分に言い訳していました。

でも本当は、近づかれるのが怖かったのです。

頭皮のにおいが気になるから。髪のうねりを見られたくないから。疲れている顔を横から見られたくないから。そう思っていたけれど、家に帰ってメイクを落としながら、ふと気づきました。

私が怖かったのは、頭皮ではなかったのかもしれません。

ちゃんとしていない日の私に、誰かが近づいてくることが怖かったのです。

きれいに整えた私なら会える。余裕がある私なら笑える。髪も肌も服も、全部ちゃんとしている日なら、自信を持って人の隣を歩ける。

でも、湿気で髪が広がる日。肌がくすむ日。服がなんとなく似合わない日。自分の中の生活感がこぼれてしまう日。

そんな日の私を見られたら、がっかりされる気がしていたのです。

けれど、その帰り道で相手が言ったひと言が、少しだけ予想外でした。

「雨の日に、ちゃんと駅まで歩いてくれる人っていいですね」

一瞬、意味がわかりませんでした。

私はずっと、自分の髪の乱れや、頭皮の気配や、横顔の疲れを気にしていました。でも相手が見ていたのは、そこではなかったのです。

濡れないように少し傘を傾けたこと。
水たまりを避ける時に、自然と歩幅を合わせたこと。
改札前で「気をつけて帰ってください」と言ったこと。

私が欠点だと思って隠そうとしていた夜に、誰かはまったく別の場所を見ていたのです。

その瞬間、なんだか拍子抜けしました。

あんなに気にしていた頭皮の不安は、もちろんゼロにはなりません。これからも梅雨の朝には、髪がまとまらなくて落ち込むと思います。シャンプーを変えたり、ブラシを見直したり、枕カバーを洗ったり、地味な努力もたぶん続けます。

でも、ひとつだけ覚えておきたいのです。

私たちは、完璧に整った日だけ愛されるわけではないのです。

むしろ、少し乱れた髪で、少し疲れた顔で、それでも誰かのために傘を傾けるような日常の中に、その人らしさはこぼれているのかもしれません。

梅雨前の6月2日。湿った空気の中で、髪も心も少しふくらみやすい夜です。

でも今夜は、ドライヤーをかけながら、こう思ってもいい気がします。

頭皮の気配を気にしていた私は、だらしない女ではありません。
近づかれることに、少し臆病になっていただけです。

そして、臆病なままでも、人はちゃんと誰かの隣を歩けるのです。

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