スマホを見る前に飲みたい、垢抜けたい日に選んだ整える美容コーヒー習慣

朝、カーテンのすき間から入ってきた光が、思ったより白かった。
もう春でもないし、でも夏と言い切るには少し早いような、あの中途半端な朝。窓を開けると、どこかの家の洗濯機の音が小さく聞こえて、ベランダのサンダルには昨日の雨の名残がうっすら残っていた。
私はというと、起きてすぐスマホを見ていた。
別に急ぎの連絡なんてないのに、Instagramを開いて、誰かの朝活投稿を見て、白いお皿にのったサラダとか、きれいに整えられたベッドとか、朝からもう完成している人たちの生活を眺めていた。
そして、まだ布団の中にいる自分に向かって、心の中で小さく言った。
「今日も、出遅れてるな」
別に誰かと競争しているわけじゃない。だけど、なぜか朝から負けた気持ちになる日がある。
顔を洗う前の鏡に映った自分は、寝ぐせが少し跳ねていて、肌もなんとなくくすんで見えて、昨日の夜に見た美容動画の「朝のむくみは放置しないでください」という言葉だけが、妙に残っていた。
ちゃんとしたい。
でも、ちゃんとする元気がない。
この矛盾を抱えたまま、私はキッチンに立った。
コーヒーを淹れる手だけは、いつも少しだけ正直だった
朝のコーヒーは、ほとんど癖みたいなものだ。
おしゃれな習慣というより、眠気をごまかすための儀式。マグカップを取って、お湯を沸かして、粉を入れる。その一連の動きだけは、半分寝ていてもできる。
でも今日は、いつものインスタントコーヒーの瓶に手を伸ばしかけて、少し止まった。
戸棚の端に置いていた「KOREDAKE STYLECOFFEE【コレダケ スタイルコーヒー】」が目に入ったからだ。
“いつものコーヒーを変えるだけ”。
その言葉が、今朝の私にはちょっとずるかった。
だって、変えたいものは山ほどある。体型も、肌も、生活リズムも、恋愛の見る目も、将来への不安も。変えたいけど、どれも大きすぎて、どこから手をつければいいのかわからない。
だけど、コーヒーを変えるだけならできる。
KOREDAKE STYLECOFFEEは、ブラジル豆100%のおいしさを大切にしながら、美容とスタイルをサポートするコーヒーとして紹介されている。公式ページでも「毎朝の一杯で、スタイルケア」という表現が使われていた。
こういう商品を見ると、昔の私は少し身構えていた。
「また美容系か」
「本当に変わるの?」
「どうせ意識高い人向けでしょ」
そんなふうに斜めから見てしまう自分もいる。美容の仕事をしているくせに、家では普通にだらしないし、夜中にポテチを開けることだってあるし、むくみを気にしながら塩辛いものを食べる日もある。
でも、今朝はなぜか、試してみようと思った。
すごく前向きだったわけじゃない。
ただ、いつもの自分のままだと、今日もまた同じように始まってしまう気がした。
「変わりたい」より先に「これ以上、責めたくない」があった
お湯を注ぐと、コーヒーの香りがふわっと上がった。
その瞬間、少しだけ部屋の空気が変わった気がした。昨日の夜に食べたコンビニごはんの袋がまだゴミ箱に見えているし、洗濯物もたたんでいないし、シンクにはマグカップがひとつ残っている。
全然、整った暮らしではない。
でも、香りだけはちゃんとしていた。
そのギャップが、ちょっとおかしかった。
「部屋は散らかってるのに、コーヒーだけ美容意識あるじゃん」
そう独り言を言って、少し笑った。
誰にも見せない朝って、たぶんこういうものだと思う。外ではちゃんとしているように見せて、仕事では笑顔で接客して、友達には「大丈夫だよ」と言って、婚活アプリのプロフィールには明るそうな写真を選ぶ。
でも本当は、朝の自分にすら優しくできない日がある。
スマホの中では、誰かが結婚して、誰かが転職して、誰かがボディメイクに成功している。私はそれを見ながら、何もしていないわけじゃないのに、何も進んでいないような気持ちになる。
「私って、何を頑張れば正解なんだろう」
そう思った。
これが、今日の誰にも言わなかった本音だった。
きれいになりたい。
でも、きれいになりたい理由の中に、少しだけ「選ばれたい」が混ざっている。
健康でいたい。
でも、健康でいたい理由の中に、少しだけ「老けたと思われたくない」がある。
自分磨きをしたい。
でも、その奥に「今のままじゃ足りないのかな」という不安がある。
だから、美容もダイエットも生活改善も、好きなはずなのに苦しくなる日がある。
本当は、変わりたいというより、これ以上自分を責めながら生きたくないのかもしれない。
小さな一杯に、人生を変える力までは求めない
KOREDAKE STYLECOFFEEを飲んだからといって、急に人生が整うわけではない。
朝から完璧なルーティンができるようになるわけでもないし、恋愛の不安が消えるわけでもないし、仕事の迷いに答えが出るわけでもない。
でも、いつものコーヒーを変えるという小さな行動には、思っていたより意味があった。
それはたぶん、「今日の私を少しだけ放置しなかった」という感覚に近い。
大きな決意じゃなくていい。
手帳に目標を書かなくてもいい。
急にジムに入会しなくてもいい。
朝5時に起きて白湯を飲まなくてもいい。
ただ、いつもの一杯を少し変える。
それだけで、自分のことを完全に後回しにしなかった朝になる。
このくらいの変化なら、疲れている日でもできる気がした。
わかる。頑張りたいのに、頑張る準備だけで疲れてしまう日ってある。
そういう日に必要なのは、気合いじゃなくて、生活の中にすでにあるものを、少しだけ自分寄りに変えることなのかもしれない。
私の場合、それが今朝はコーヒーだった。
飲み終わったマグカップをシンクに置いて、ふと鏡を見る。相変わらず寝ぐせは残っているし、顔もぱっと明るいわけじゃない。
でも、さっきより少しだけ、自分に対する目線がやわらかくなっていた。
「まあ、今日もなんとか行くか」
前向きというほどきれいな言葉ではない。
でも、このくらいの温度が、今の私にはちょうどいい。
美容って、もっと華やかなものだと思っていた。新しい服を買うとか、肌が見違えるとか、誰かに褒められるとか、そういうわかりやすい変化ばかり追いかけていた気がする。
でも本当は、誰にも見られていない朝に、自分を雑に扱わないことも、美容の一部なのかもしれない。
誰かに選ばれるためじゃなくて。
未来の自分を完璧にするためでもなくて。
今日の自分が、少しだけ嫌いにならずに済むために。
そう思うと、コーヒー一杯くらいの小さな選択にも、ちゃんと意味がある気がした。
出勤前、バッグにスマホを入れようとして、また少しだけInstagramを開きかけた。
でも今日は、すぐ閉じた。
別に偉いことじゃない。
ただ、画面の向こうの誰かの朝より、さっき自分で淹れたコーヒーの香りを、もう少し覚えていたかった。
今日の私は少しだけ変だった。
でも、悪くない変さだった。
いつもの朝を変えるのに、人生全部を変える必要はないのかもしれない。
まずは、手元の一杯から。
そんな小さなことを思いながら、私は玄関の鍵を閉めた。
昨日とほとんど同じ一日が始まる。
でも、ほんの少しだけ違う朝だった。





